「冬真と相模(さがみ)が一緒に行動するように」

 爺さんが言えば、紋付袴の男性が静かに席を立つ。相模と言われた人は、さっき挨拶周りをした時に爺さんの傍にいた人だ。
 親父に聞けばあの爺さんの名前は相模と言い、あの人のお父さんらしい。長年長男が出来ずにいた為、相模さん自身産まれたのは、爺さんが年配になってかららしいが。

「八大竜王の中でも大地を扱う術者か」

 群真さんの中にいた篝が姿を見せると、相模さんを見て呟いた。鼻で小さく笑うと冬真さんに自分も連れて行けなんて言い出すもんだから――

「ここには泰葉が居れば大丈夫だろ? 一度水神の守護者と闘いたい。どうだ? 頼もしくないか?」

 篝自身満々の顔で言えば、冬真さんは群真さんをちらりと横目に見た。群真さんは小さくため息をつくと、冬真さんに何かの為にとお札を手渡した。

「ふん、あの札を付けられるようなヘマはしない」

 お札を見た篝が小さく呟けば、泰葉も小さく笑った。あの札はきっと暴走した篝を小さくする為の札だと俺は気付き苦笑した。
 何かの為に――
 篝が暴走しやすい性格を知る群真さんの先手と言うことだ。俺達は札を使わないで済むようにと願うしかないと言うことだ。