俺の肩に止まった一羽の鳥。
 それがさっき追跡に向かわせた風雅と言うことに俺は中々気付かずにいた。

「風雅、追跡は?」

 俺の中にいた泰葉が姿を現し聞けば、風雅は小鳥から本来の姿に変わり、目の前にひざまついた。

「ある程度まで皆で追いかけましたが、途中強い結界が張ってあり、それ以上の追跡は…」
「ふむ、無理だったと」
「…はい」

 強い結界と聞き、群真さんと冬真さんの顔が強張る。その強い結界の先に何があると言うのか。
 何人かの式神は結界を破ろうと試みたが、向こうの力が強力なのか術は全て跳ね返されたらしい。

「啓太には強い何かが後ろ盾にいるんだろうな」
「強い何か?」
「ああ、強い術者か強い守護者のどちらかが、黒幕なんじゃないかな?」

 冬真さんが爪を噛み苦い顔して言うと、群真さんは真剣に何かを考えていた。周りの年寄り連中は帰って来た式神に話しを聞き、強力な結界が張ってある辺りまで行くか行かないかと相談を始めていた。

「冬真、すまぬが一緒に来てくれないか?」

 不意に相談していた年寄り連中の爺さんが、冬真さんに声を掛けた。冬真さんはゆっくり立ち上がると、軽くため息をつき数珠を手にした。

「水神には龍神と言うことですか?」

 静かに聞けば爺さんはゆっくりと首を縦に振った。水には火とでも言いたいのか、冬真さんが凄い術者なのか分からないが、数人呼ばれた若い術者の中で冬真さんが指揮を取ると爺さんが話した。