「俺達龍神の術者ってのは、意外と数が多いんだ。僧侶でも、宗派があるように龍神にも色んな派閥がある」

 冬真さんが俺に龍神に守護される術者の話しをしてくれた。俺達天狗の術者と違い、龍神・水神の守護者を持つ術者は多いらしく、派閥によって別けられているらしい。
 その派閥も、龍神の下で支える八大竜王と呼ばれる神様が持つ力で構成される派閥で、水神様は八大竜王の水を司る竜王を子飼いしていたらしい。

「龍神にも色々あるんですね」
「そうだね。天狗は派閥はないからね、あんまりこう言った話しには巻き込まれないんで済むんだけどね」

 苦笑いを浮かべ言う冬真さんに俺も苦笑いを浮かべた。きっと啓太さんが俺を以前襲った理由は、『鴉天狗』である泰葉が欲しかったからだ。

 今の啓太さんには、ただの天狗じゃダメなんだ。

 家を勘当されて意地を張っているのもあるのだろうが、今の啓太さんの目に映っているのは、『鴉天狗』の長と言う姿をした泰葉だけなのだと、俺は思った。
 確かに、鴉天狗の術者を倒して泰葉を自分の守護者にしたとなれば、箔が付くだろうが。
 あの泰葉が易々と、倒されるわけがない。継承式の日を狙ったのも、俺にまだ術者としての力が確立されていないと踏んでのことだ。

 あの結界も、閉じる真似をしただけで本当は騒ぎを起こす為にわざと開けて置いたんじゃないだろうか?
 実は今日の来客者の中に、啓太さんに協力している人がいて、参加する筈がない啓太さんを手招きしたとか?

 考えれば考える程、頭の整理が着かない。考える俺の前に、一羽の小鳥が降りて来た。