式典が始まる時間になれば親父を先頭に会場に入って行く。親父、俺、泰葉と並べば会場に向かい一礼をし、親父から紹介される。
 それが終われば次は一族の自己紹介が始まった。自己紹介と言っても簡単な物で、自身と守護者の紹介と言う物。

 自己紹介が終わればそれぞれ挨拶に俺と泰葉で回る。招待された親族の前に行き、酒を注ぎ込み話す。他愛がない話しをする者もいれば、説教染みた話しをする者もいる。
 年齢も様々で、長男がいない家系は歳を取っていても、現役の術者と言うわけだ。次々と回り群真さんのところへ行くと、群真さんと良く似た男性が群真さんの隣に座っていた。

 傍らには龍神の守護者だろうか、金に輝く長い髪をした男を置き、落ち着いた物越しで酒を口にしている。

「初めまして、鳴海悠斗です。以前弟さんには大変お世話になりました」
「初めまして。群真の兄の冬真です」

 挨拶をすると丁寧にも挨拶を返してくれた。俺は酒をグラスに注ぐと、少し話しをして違う席へと回った。
 泰葉と龍神の守護者が会話するのかと思えば、一切会話はなく。お互いがお互いを見合い合っているだけで―――

 天狗がプライド高いって本当だったんだ。

 今日の泰葉はいつもと違う。背筋を伸ばし扇を口元に当て、いつもより大きく感じる。
 会場には、天狗族以外の種族も集まっているからだろうが、泰葉や泰葉以外の緊迫した気配もひしひしと痛く俺に突き刺さり。
 この式典で何が起こるか分からないと口にした泰葉が言っていた意味が、初めて分かった気がした。