街を歩けば妖怪を見掛ける。
 熱もないのに悪寒がすれば近くに雪女がいたり、池に向かえば河童が泳いでいる。
 そんな風景が日常茶飯事で、同級生には人間と妖怪のハーフがいたりと、時代は確実に変わっていた。

 ここまで妖怪が出る街はこの街だけだが、観光客も増え街興しにはなっているらしい。

 外国へ行けば、普通に吸血鬼だっているんじゃないだろうかとさえ思ってしまう。

 この街では、天使や悪魔だって見られるだろうなんて、周りのやつと笑い話しをしたりするけれど、今までその姿は見たことがない。







 誕生日の朝、不思議な夢を見た。

 暗闇の中、光る一枚の漆黒の羽。

 それは俺の掌に落ちて行き、すぅっと、溶けて行った。
 目覚め布団から起きた俺は、目を擦り辺りを見渡した。
 ただならぬ気配にぞくぞくと悪寒が走る。俺は近くに立ててある竹刀をゆっくり手に取ると、ゆっくりと瞳を閉じた。

 意識を一点に集中させ、一気に目を開け竹刀を振る。
 竹刀が空に舞うと、ただならぬ気配は自然と消えて行った。
 俺は首を傾げ、もう一度辺りを見渡したがそこには何もなく、静寂だけが漂っていた。

 目覚めが悪いと頭を掻きながら一階へ降りると、母親が用意してくれた朝食が目に入った。

 誕生日だからなのか、朝から俺の好物が並び俺は胸を弾ませた。神社と言うこともあり、朝食は必ずご飯なのに。
 今日は珍しく、朝からハムエッグとパンが並んでいる。俺はいそいそと顔を洗い歯を磨くと、笑顔で食卓に座った。