怒り出した篝の足元から火の輪が燃え上がり、駆け出したと思えば流鬼の頭を手だけで掴んでいた。
 掴んでいた手を振り上げると、床に流鬼を叩き付けその上に跨がり馬乗りになる。群真さんはその様子を黙って見ているが、俺は右往左往して喧嘩を止めさせようとしていた。

「煩い! 新参者がっ!」
「兄様!」

 篝が俺に向かい言えば、流烏が流鬼に向かい何かを投げ渡した。流鬼はそれを受け取ると、何やら呪文を唱え篝の胸に貼付けた。

「ぐっ…!」
「―…気を逸らすからだ。天狗とも言えど、動きを封じられては手も足も出まい」

 とんっと掌で篝の胸を押せば、流鬼の言う通り簡単に篝は流鬼の上から崩れ落ちた。頭を使う流鬼と流烏に対し、篝は力付くと言う感じだ。
 篝の気が弱くなり、篝の周りを纏っていた火の輪が消えて行く。その様子を群真さんと泰葉は不適に笑い見つめていた。

「篝、もっと頭を使えと言っているのだ。お前が天狗族の頂点に立てない理由はそこだ」

 そう言いながら流鬼が篝の額を指差した。式神と天狗、決して天狗が強いわけではないと、身体を張り二人は篝に分からせようとしているのか。

「術を解いてやれ」

 群真さんの声に頷いた流鬼が篝に貼付けた紙を剥がした。紙を剥がした途端、篝はいつもみたく俊敏に動き先程のことが嘘のようだった。

 式神と天狗を上手く手を組めば、術者が力を使わなくとも妖怪達等倒せるのじゃないだろうか?
 俺も式神を使えるような術者になりたい。そう思う俺に、泰葉は小さく笑った。