「失礼します。篝達を連れて参りました」

 リビングの向こうから女性の声が聞こえ、群真さんが返事をすればリビングの向こうから、ミニの着物を纏った女性が篝達を引きずりながら入って来た。

「流烏(るう)ご苦労様」

 群真さんが言えば流烏と呼ばれた女性が先程の鳥を呼び寄せた。鳥が流烏の前に羽ばたくと、群真さんが流鬼(るき)と鳥を呼ぶ。
 流鬼と呼ばれた鳥が群真さんの前に降り立つと、瞬く間に人へと変化していった。この二人が群真さんの式神なのだろうか。

 篝とは違い二人共凄く落ち着いている。

「篝、何故主から離れた?」
「ちっ、うるせーな流鬼は」

 篝が膨れっ面をすると、流烏が篝の頭を叩いた。どうやら篝はこの二人が苦手らしい。

「式神の分際で」
「む、我等は術者の分身ぞ?」
「だけど式神じゃねぇか。魂だけで実体は創られたモノだ」
「お前の監視役でもある」

 天狗と式神どちらが偉いとか良く分からないけど、天狗と違い式神には群真さんの意識も埋め込まれているんだ。

「式神風情が天狗に勝てると思ってんのか? お前達は所詮紙切れから出来たモノのくせに」

 お前達の言うことには耳を貸さないとばかりに、篝がリビングを出ようとした。リビングの扉に手を延ばした篝の背中目掛けて、いきなり流鬼が火の矢を放った。

「―…っ!」

 火の矢は物の見事に篝の背中に刺さり、篝がゆっくり流鬼を睨み見た。

「こぉ…んの、野郎…」