鳴海家の本家を知る為には、どうすれば良いのか。考えてみても良く分からない。泰葉に聞けば分かるかと思えば、泰葉は昔から長だったわけではないらしい。

 鴉天狗の中にも『世代交代』はあるらしく、泰葉は長になりまだ二百年くらいしか経っていないらしい。
 泰葉が長になった頃は鳴海家には長男がおらず、泰葉はずっと地下室にある扇の中で眠っていたらしい。

「群真さんは、いつから術者に?」
「俺は術者になってまだ6年かな」

 群真さんは今年26歳で、二十歳の誕生日に力を継承するのはどの術者も同じらしい。群真さんも力を継承した頃は、俺みたく上手く力が使えず悩んだと話してくれた。

「今すぐは無理でも何れ上手く操れるから、今は焦らないことだ」
「…はい、ありがとうございます」

 俺は礼を言うと、今日はお疲れ様でしたと挨拶をし、客間を後にした。

 自室に戻ると泰葉が小さな箱を見つめながらベッドに寝転んでいた。俺がベッドに腰を下ろせば泰葉も身体を起こす。

「お前、呪文で小さくなるんだな?」

 今日起こったことを思い返し言えば、泰葉は惚けた顔して知らぬと答えた。自分に都合の悪いことは話さないつもりなのか、箱を俺に手渡すと姿を消してしまった。

 きっと俺の中に戻ったんだろうと俺も気にせずベッドに横たわる。手にした箱を見つめながら、何時になれば自由に風を操れるようになるのかと考えていた。