「俺の名前は若林群真だ。君と同じ術者だ」

 やっぱり、群真さんは術者だったんだ。でも、天狗って鴉天狗以外にもいる種族なのか?

 泰葉は自分自身を鴉天狗の長だと言っていた。

 篝も天狗と呼ばれていた。

『俺は龍神の天狗だ』
「龍神の天狗?」
『そう、龍神様にお支えする天狗一族の一人だ』
「へぇ」

 龍神は聞いたことあるけど、天狗が龍神に支えていたなんて初めて聞いた。そもそも、龍神って…龍なんだよな?

「うちは龍神と天狗両方奉っていてね。兄が龍神、次男の俺が天狗に守護されている。鳴海家の分家の一つなんだよ」

 へぇ、必ずしも守護されるのは長男だけではないと言うことか。しかも、家みたく天狗様だけを奉っているわけでもないと。
 龍神を奉る家にも特別な力を持つ術者が存在する。そんな話し、親父からも泰葉からも聞いたことがない。

「…で、群真さんの用件は?」
「家の父から継承の話しを聞いてね。新しい術者様にご挨拶に伺ったんだけど、この馬鹿天狗がめちゃくちゃにしてくれてね」

 そう言うと、小さくなった篝の頭を軽く指で弾いた。軽く弾いただけなのに、小さいからか篝がふらついている。
 ふらつく篝が文句を言えば、群真さんはため息をつき苦笑いを浮かべた。天狗様に苦労を掛けられているのは、どうやらどこの術者も同じらしい。