扇を下ろした泰葉の手を借り、篝と呼ばれた男が立ち上がると同時に、俺の部屋の扉が勢い良く開けられた。

 親父と俺の知らない男が押し寄せる様に部屋に入って来ると、男は篝にいきなり蹴りを入れた。

「いてぇーっ!群真っ蹴ることねぇだろ!?」

 篝が足を押さえ『ぐんま』と呼ばれた男を睨み見る。群真と言う男が俺を見ると、その場に土下座をし始め―――

「すまん! この馬鹿天狗が!」

 て…天狗ーーーっ!?
 この赤い髪した男が天狗様だと言うのか!?

「謝ることねぇじゃん? コイツの力量を見たくてしたことなんだからよ〜?」
「馬鹿か! 目覚めたばかりの術者にすることじゃないだろう!」

 俺達の前で言い合いを始めた二人に呆然とする。呆然としながらも、二人の話しを聞いていた。
 この赤い髪の男が天狗と言うことは、この群真と言う人も俺と同じ術者と言うことなのだろうか?

「群真君、その辺にしないとうちの息子が話しに着いて来れないみたいだ」
「英司さん、すみません」

 親父の知り合いなのか、親父の話すことを素直に聞き入れると、何か呪文を唱えた。呪文を唱えると、篝が声を挙げだんだんと小さくなった。

『何すんだよ!』
「煩い! お前は暫く封印だ」

 小さくなった篝に泰葉がちょっかいを出せば、親父が呪文を唱え泰葉まで小さくされてしまった。

「では、落ち着いたところで、本題宜しいですか?」

 群真さんの一言に親父が頷いた。一体、何の話しをすると言うのだろう。