「お前、人間じゃないな?」

 窓から入れるやつなんて人間じゃねぇー!! 絶対、魑魅魍魎か妖怪かなんかの類いに決まっている!

「魑魅魍魎? 俺、そんなに醜い?」
「おま、お前!! 俺の心が読めるのかよ!?」

 聞いた俺に、そいつは笑顔で頷いた。赤い髪を掻き上げ立ち上がり俺に近付いてくる。
 俺の目の前まで来ると立ち止まり、ゆっくりと俺に手を延ばす。もう少しで俺に手が届くところで、突風が吹き上がりそいつは壁へと叩き付けられた。

「ぐっ!」

 壁に叩き付けられた男はそのままずるずると床に落ちて行き、突然のことで俺は呆然としていた。

「主は馬鹿か?」

 呆然とする俺の前に漆黒の羽が広がる。俺の前に泰葉が立ちはだかり、顔だけこちらをちらりと見ると、直ぐさま扇を振った。
 びゅうっと突風がまた吹くと、俺の部屋の物が宙に浮く。宙に浮いた物目掛けて今度は炎が挙がった。

「ま…待て待て待てぇ!!」

 俺のベッドが燃える!!
 焦り声を挙げれば、直ぐさま炎と風は止み、部屋の中に静寂が訪れる。
 泰葉は赤い髪の男に歩み寄り扇で顎を捕らえると、自分の方へ顔を向けさせた。
 俺は部屋に落ちた物を拾い上げながらも、とりあえず泰葉に任せようと、離れた場所で二人を見ていた。

「―…久しいな、泰葉」
「―…主は…篝(かがり)」

 知り合いなのか、泰葉がゆっくりと扇を下げた。