俺様男に心乱れて

アパートの階段を下りると、黒塗りの車の前で、濃紺のスーツを着た黒崎さんが立っていた。

「おはようございます」

と私が頭を下げると、黒崎さんも「おはようございます」と言い、後部のドアを開けてくれた。

「すみません」と言って私が車に乗り込もうとすると、黒崎さんに嫌な物でも見るような、冷たい目で睨まれてしまった。

この人、私の事嫌いなんだ…

「黒崎さん、そんな目で小枝子を見ないでくれる？」

「申し訳ありません。しかし…」

「言うな！ 余計な事は言わないでください」

「申し訳ありません」


黒崎さんは何を言おうとしたんだろう…

私はそれをむしろ聞いてみたかった。なぜ黒崎さんに嫌われているのか、知りたかったから。