俺様男に心乱れて

すると、アパートの前に、黒いコートを着た背の高い男性が立っているのが見えた。亮介さんだ。

マスターも亮介さんに気付いたらしく、ハッと息を飲む気配がした。

「彼に今夜の事を説明しようか?」

「自分で言いますから大丈夫です」

「そうかい? じゃあ、今日は本当にありがとうね。それと明日の開店、よろしくね」

「はい。おやすみなさい」

マスターは私にお辞儀をし、亮介さんにも会釈をして帰って行った。

亮介さんは、この寒い中私を待っててくれたんだ…
私も部屋のスペアキーを亮介さんに渡しておこうっと。

私は小走りに亮介さんに駆け寄った。嬉しくて、つい頬が緩むのが自分でも分かった。

「待ってて…」

『待っててくれたの?』と私が言いかけたら…

「そういう事か…」

と、亮介さんは低い声で呟いた。