俺様男に心乱れて

「熱はだいぶ落ち着いたみたいです」

「うん、そのようだね?」

マスターは走って来たのか、息を切らしていたけど、ホッとした顔をした。

「美緒、ごめんよ。辛い時に独りにしちゃって…」

マスターは美緒ちゃんに心底申し訳ないという表情をした。
マスターが、いかに美緒ちゃんを愛しているかが、よく分かった。

「ううん、パパはお仕事だったんだからしかたないよ。おねえちゃんが来てくれてうれしかった」

「そうだね。小枝ちゃん、本当にありがとう」

マスターが私に向かい、少し白髪の混じった頭を深々と下げるので私は恐縮してしまった。


「念のため、明日は美緒ちゃんを病院に連れて行った方がいいと思います」

「ああ、そうだね。店は半日休業にするかな」

「あ、私が早く行って開けておきますよ」