「それはわるいよ。君だって疲れてるだろうに…」

「大丈夫ですよ。それに、私も美緒ちゃんが心配ですから」

「そうかい? じゃあわるいけど、お願いしようかな」

「はい」


私はマスターから家の鍵を預かり、喫茶店を出てそのままマスターの家へ向かった。

マスターの家には一度だけ、美緒ちゃんの誕生日に行った事があり、道順は覚えていた。喫茶店から歩いて15分くらいの距離だった。

大きくはないけどお洒落な感じの一軒家に着き、鍵でドアを開けると、中は真っ暗だった。

本当に美緒ちゃんはいるのかしら?
もし、いるとしたら…

私は不吉な事を想像しそうになり、慌ててそれを打ち消したりした。

手探りで照明のスイッチを探し、明かりを点けたものの、そこに美緒ちゃんの姿はなかった。