俺様男に心乱れて

「え、あ…、まあ…はい」

マスターの急な追求に、シドロモドロな受け答えになってしまった。

「何すか、封筒って? 忘れ物すか? ここに? 違う? じゃあどこにすか? 小枝子さん!」

健ちゃんの矢継ぎ早な追求にアタフタしていたら、来店を告げるチャイムが鳴った。

「あら、お客様だわ。いらっしゃいませ〜」

私はさっさとトレーに水の入ったコップを乗せ、営業スマイルを顔に浮かべて接客に向かった。

ふうー、助かったわ。
それにしても…

マスターが暗い表情を浮かべていた事が、私にはちょっとだけだけど、気掛かりだった。

気掛かりと言えば、亮介さんはどうして来たんだろう…
ひょっとして、琢磨を探しに?

なーんてね。そんなの私の欲目だわ。朝食を食べに来ただけよ。
でも、亮介さんの表情は真剣だったと思うし…

そんな事を頭の中でグルグル考えていたけど、亮介さんが店を出る時に言い残した次の言葉で、私はそれどころではなくなった。

「今日はこれから出掛ける。明日の夜には帰ってるから、気が向いたら来いよ」