「ちょっと、やめてください」

私は肩に回された亮介さんの手を振りほどいた。

「何だよ?」

「私、帰ります。今夜はご馳走様でした」

私がペコッと頭を下げたら、腕をグイっと掴まれてしまった。

「帰さないって言ったろ? 黙って付いて来い」

亮介さんに恐い顔で睨まれてしまった。でも、私には睨まれる謂れはないわ。

「何よ、偉そうに! 放してください。さもないと大声出すわよ?」

私がそう怒鳴ると、亮介さんは一転して悲しそうな表情に変わった。

「今夜はなぜか一人になるのが怖いんだ。そんな俺を慰めてくれないか?」

亮介さんは、眉を下げた懇願するような表情で私を見詰めた。手は私の腕をガッチリ握ったままで。

「下手な演技ね?」