しばらくして、車は華やかなショーウインドーの前で停まり、黒崎さんが後部のドアを開けてくれた。

「ねえ、私も降りるの?」

先に車を降りた亮介さんに聞いたら、「当たり前だろ?」と言われた。

私は車を降りると、亮介さんに腕を引かれ、その高級洋服店という感じの建物に入って行った。

「ねえ、どういう事?」

「ん? 俺と黒崎さんの会話を聞いてなかったのか?」

「聞いてたけど、よく意味が分からなくて…」

「つまりだ、これから飯を食いに行くのに、小枝子の格好じゃまずいんだそうだ。だから着替えてもらう」

「着替えるって、こんな高そうなお店で?」

「そんな事は気にすんなって。あの企画書が俺の会社にどれ程の利益をもたらすか。それを聞いたら遠慮する気がなくなると思うぞ」