俺様男に心乱れて

私達はそのままの格好でアパートの階段をコツコツと降りた。

男の腕を振りほどこうかと思ったけど、階段で揉み合うのは危ないから、ね。

階段を降りると、アパートの前の道路に大きな黒塗りの自動車が停まっていて、後ろのドアの前に、紺のスーツを着た40代ぐらいの男性が、姿勢良く立っているのが見えた。

私達が近付くと、その男性は私達に会釈をし、ガチャッと車のドアを大きく開いた。

私がキョトンとしていると、

「さあ、乗って?」

「あ、はい」

男に軽く背中を押されて黒塗りの車に乗り込み、奥にずれると隣に男も乗り込んで来た。

「わざわざハイヤーを呼んだの?」

「いや、実家の車さ」