俺様男に心乱れて

小枝子はリビングのソファーに座り、幸子に母乳を与えていた。

「幸子、今日はお外寒かったね? こんな寒い中帰って来るパパが可哀相ね? でも今夜はご馳走をいっぱい用意したから、喜んでくれるわよね?

そろそろかしら。早く帰って来るといいね?」

まだ生後半年にも満たない赤ん坊の幸子は、もちろん母親の言葉に返事をする事はない。

それでも小枝子は愛しい我が子に語りかける事はやめない。それは幸子がまだお腹の中にいる時からだった。

そんな小枝子を、亮介は微笑ましく眺め、愛しいと思った。


ここは郊外の丘の上に建つ一軒家。特別大きくはないが、腕の良い建築士が、丹誠込めて設計した素晴らしく住み心地の良い家だ。

広い庭に植えた芝生も根を張り、気の早い亮介が設置したブランコなどが、シートの下で使われる日を待っている。