俺様男に心乱れて

そう言えば、今日は午後から冷たい雨が降り始めていた。

小枝子は幸子(ゆきこ)を連れて買い物に行ったのだろうか?
冷えて風邪など引いていないだろうか…

幸子は、秋に生まれた亮介と小枝子の娘だ。
母親の小枝子が幸薄そうな名前に思えたので、娘にはそういう名前を付けたのだった。


「そう? 気を付けるから大丈夫だよ。じゃあね」


地下駐車場で愛車のBMWに乗り込み、地上に出ると果たして雨は雪に変わっていた。

まだ路面に雪は積もっていないが、滑りやすくなっているだろうから、気を付けないとな。

窓に降り掛かる雪を見て、亮介はちょうど一年前を思い出していた。

黒崎さんから連絡をもらい、小枝子を迎えに小枝子の実家へ行ったあの時も雪だった。

小枝子を再びこの腕で抱きしめられた喜び。そして小枝子のお腹に幸子がいると知った時の驚き。

思わず叫んじまったよなあ。
思い出しては顔が綻ぶ亮介だった。