「何よ?」

すぐに倫子は立ち止まり、亮介を振り返った。
言葉とは裏腹に、亮介から名前を呼ばれただけで嬉しくなる気持ちを、顔に出さないようにして。

「倫子とはこれからも長い付き合いになる。だから、小枝子と仲良くしてほしい」

また小枝子さんか…

倫子は失望を顔に出さないようにして、ニッと笑ってみせた。

「あら。小枝子さんとは仲良くしてるわよ。もう少ししたら、一緒に料理教室に通う事になってるの。知らなかった?」

「あ、そう言えばそんな事を言ってたな」

「心配しないで大丈夫よ。私はこう見えても小枝子さんには感謝してるの。一年前、あんな酷い事を言った私を許してくれたんですもの」