俺様男に心乱れて

黒崎さんが、なぜ此処へ…?

「ささ、どうぞお上がりください」

「いえいえ、私は此処で結構です」

母は黒崎さんに家の中に入ってもらおうとするけど、黒崎さんは頑なに拒んでいた。

「小枝子、知り合いの方なんでしょ? わざわざ東京から来て下さったんだから、あなたからも上がっていただくように言って?」

「え、うん…」

「いいえ、本当にそれは結構です。私は小枝子さんに謝罪に来ただけですから…」

謝罪?

「そうですか? では…」

母は黒崎さんにお辞儀をすると、その場を外してくれた。


「小枝子さん…」

母がいなくなると、黒崎さんは神妙な顔で私の名を呼んだ。
東京で最後に会った時の、私に対する横柄な態度とあまりに対照的で、私は狐に摘まれたような心境だった。そして…

「申し訳ありませんでした」

と、黒崎さんは腰を折るようにして深々と私に頭を下げた。