『北島亮介でございますね?』

「はい」

『分かりました。電話をお回ししますので、切らずにそのままでお待ちいただけますか?』

「あ、はい」

少し待っていると、いきなり電話口に男性の声が飛び込んで来た。

『あんたか!?』

声で今朝の男だとすぐに分かった。

「私は『あんた』なんて名前じゃありません」

『ああ、すまん。それより、助かったよ。すぐに持って来てくれ』

「はあ? あなたが取りに来ればいいでしょ?」

『いや、時間がないんだ。車を飛ばして来てくれ。頼む』

「私、車は持ってないもん」

『バカ。タクシーだよ!』

「バカですって!?」

『悪い、口が滑った。後で礼はするから、頼む! その企画書がないと困るんだよ…』

「分かったわよ、行けばいいんでしょ?」

『ああ、頼む。下で待ってるから』