俺様男に心乱れて

土曜日。

マンションの前で待っていると、シルバーメタリック(っていう色らしい)のピカピカの新車が目の前にスッと停まった。

運転席から颯爽と降りて来るのは、普段とちょっと雰囲気が違う、アラン模様のセーターを着た亮介さん。

「どうだい?」

「うん、素敵よ」

私は亮介さんを見つめながらそう言った。だって、本当に素敵なんだもん。

「おまえ、どこ見て言ってんの? 車の事なんだけど?」

「あ、車ね。うん、キラキラして綺麗ね」

「BMWの新型。ちょっと贅沢だったかなあ」

「ベーエム…なに?」

「小枝子は車の事、知らないんだな…」

「ごめんなさい」

「まあいいや。さあ、乗って?」

カチャっと音をさせ、亮介さんが助手席のドアを開けてくれた。

「ありがとう」

乗り込むと、革の臭いがした。