俺様男に心乱れて

いつの間にか傍に健ちゃんも来ていた。

「うん、私の誕生石だから…」

「大きいっすね…。何カラットあるんすか?」

「さあ…」

「素敵…」

「高そうっすね!?」


「エンゲージリングかい?」

「はい。彼はそう言ってました」

「良かったね」

「はい」

マスターは微笑みながら、少し目を潤ませていた。

私も目頭が熱くなりながら、昨夜の亮介さんとのやり取りを思い返していた。



夜の10時頃、お料理の本を眺めていたら、ドアのチャイムが鳴った。

インターホンで亮介さんが帰って来た事を確認すると、パタパタと玄関に走ってドアを開いた。

「ただいま」

「お帰りなさい」

優しい笑顔の亮介さんを、『お帰りなさい』と言って迎えるこの瞬間が、私が最も幸せを実感する瞬間だった。