「小枝ちゃん、止しなさい」

マスターはそう言って私の腕を放した。

「北島さん、小枝ちゃんの話を真に受けないでください。私は小枝ちゃんに指一本触れていませんよ。
小枝ちゃんがどうしてさっきみたいな事を言ったのか、その辺りの事を二人でよく話し合ったらいかがですか?」

「マスター……?」

「さあ、入ってください。モーニングセットをサービスしますよ。北島さん、あなた殆ど寝てないでしょ?」

そういえば、今朝の亮介さんは髪が乱れ、目の下にはクマができ、薄く無精髭を生やしていた。だから、いつもと感じが違ったんだ…

でも、どうして?

亮介さんはマスターに背中を押されながら中へ入って行った。

「私は着替えないと…」

「それは後でいいから。それよりも小枝ちゃん、素直に話しなさい。いいね?」

「……はい」