マスターに悩みを聞いてもらおうと思ったけど、他愛のない会話の内に気分がスッキリしてきた。マスターって、癒しの能力があるのかしら。

「悪いけど、もう店を閉める時間なんだよね」

「あ、そうですよね。あの…図々しいお願いなんですけど…」

「ん、何だい?」

「今夜、マスターの家に泊めてくれませんか?」

「どうして?」

「あの人に会いたくないんです」

「ん…いいですよ。美緒も喜ぶし」

「ありがとうございます」


マスターの家に着き、ドアを開いてマスターが「ただいまー」と言うと、「パパ、おかえりー」と叫びながら駆けて来る、美緒ちゃんの可愛い足音がした。