あたしはできるだけ優しく、フィオに話しかける。


「…確かに、魔術をかけたのはフィオかもしれないけど…全ての元凶は、この世界の制度でしょ?フィオのせいじゃないよ」


「でもっ…、僕の命を救ってくれたあなたを、この世界に呼んでしまったのは僕のせいですっ…」


「え?命?このブレスレットは、助けた猫が落としたのを拾って…」


フィオの言葉の意味が分からず首を傾げ、そこまで言った時…一つの可能性が浮かび、あたしは口を開けたまま固まった。


そんなあたしを見て、フィオは申し訳なさそうに口を開いた。


「…もうお察しの通り、あの黒猫は…僕なんです」


ああ……あたしの頭は、今日はやけに冴えているみたい。


それが良いのか悪いのか分からないけど、とりあえずフィオが言っている意味は理解できた。


「えっと…フィオは、人間でいいんだよね?」


「はい。一応変化術は動物のみ習得しています」


「そっか。それで、あたしの世界に生け贄を選びに来て…」


「はい。何か大きな物に轢かれそうになった僕を…リオさんが助けてくださって。でも、異世界の人に触られて驚いてしまって…ブレスレットを落としてしまったんです」


しょんぼりと肩を落としたフィオは、本当にすみません、と小さく謝る。


フィオの言い方だと、あたしが最初から生け贄に選ばれていた訳じゃなくてーーーブレスレットを、たまたま拾ってしまったから生け贄になったんだ。