心の中でお別れを告げて足を進めると、ウタクの真っ直ぐな声が聞こえてきた。 「……待っているぞ、実雨」 ……私の名前!? 驚いて振り返ると風が強く吹いて、止むと同時にウタクの姿は消えていた。 お前、としかウタクに呼ばれたことはなかったのに。 別れのときにやっと名前を呼ばれるなんて。 ……しかも「待っている」なんて……意味深で気にかかる。 「勝手に待ってれば……?」 私はもう、ここに寄りつく気持ちはない。 ウタクの言葉を振り切るように夜道を早足で家へ帰った。