ウタクの唇に塞がれたから……

私は言葉に出来なかった。


この重ねた唇から伝わるかな?


今までのありがとうと、これからのよろしく。




私が犠牲になることで、母が助かるならって思い、あやかしの世界へ来た。

でも今は、私が犠牲になれば悲しむ人がいることを実感する。


ウタクもわかってるよね?


まだわかってないなら、ちゃんと伝えたい。




「ウタク……っ」


「足りんな。もう一回、実雨が欲しい」



再度交わしたキスは、

私の伝えきれない想いをいっぱい込めた、

少し深めで甘美なキス。




「雨濯。私、幸せだよ」




そして、きっとこの先も。





目蓋を開ければ、

降り注ぐ木漏れ日が私達二人を包み込んでいる。


緑の風が、白の髪と金の髪を優しく揺らした――――。







【終】