ウタクはそんなことを言いつつも、私の顎に手を当て、ゆっくりと持ち上げた。


「何もしないんじゃなかったの?」


精一杯の虚勢を張ってみたけど、ウタクには効果なし。



「何も、とは言ってない」


「でも……言ってることとやってることが違う気がする」


「これは力を補給するんだ」


「力を補給?」



聞いている間にも近づくウタクの顔。

既にもう、お互いの息がかかるほど。



「ふん、人間界とあやかしの世界を往復したり、耳を隠したり、尻尾をしまったり……

誰かさんのために随分と力を使ったからな」


「……ごめんなさい」


「謝罪より感謝の方が幾分いいな」



……ありがとうって、言おうとしたのに。