「日本の文化を勉強されるんでしたら、もっといいところがあったでしょうに……」
「いえ、あそこの神社が一番素敵です」
「……そうですか」
憐れむように言った母は、一番だと言い切るウタクを不思議そうに見つめた。
「それで今日は?わざわざ私の退院祝いに駆けつけてくださったの?」
母は冗談めかして言ってみせた。
でもウタクは真剣な眼差しで頷く。
「はい。長期入院されてたお母様が退院と聞いたので。
それと……お母様に一つ、お願いがあって」
「お願い……?」
「ウタク?」
小首を傾げて、言葉の続きを尋ねる母。
この感じ……露木さんから母のことを言われた時に味わったものと似てる。
でもその時以上に、鼓動も胸に広がるものも大きい。

