心は決まっていたはずなのに。
いつも通りの生活をしながら信じて待っていれば、必ず迎えに来てくれるってずっと思っていたのに。
今、確かに幸せの形は変わった。
そこに露木さんという人が加わったから。
ウタクは、母が露木さんを見つけたように、私に人間界で寄り添う相手を見つけて欲しいのかもしれない。
金狐になったけど、術が使えるわけではないし、体に変わったところもない。
慣れないあやかしの世界で、しかもウタクに遊ばれて、皐月さんにいじめられて過ごすのは大変だろう。
今まで通り人間の生活に戻る方がたやすい、というより既にもう戻ってる。
開いた穴だって誰か別の人がスッポリ埋めてくれるかもしれない。
婚姻の儀を交わしたからといってもそれは人間界では通用しないこと。
元気な母と優しい露木さん。
明るい友達。
皆に囲まれながら、私は素敵な人間の男性を見つけるんだ。
それで人間の男性と結婚して人間の子供を宿して、温かな家庭を作る。
きっと、これが私の求めていた幸せ。

