「実雨ちゃん……ありがとう!」
露木さんも感激と安堵が入り混じったように、眉を下げて涙を浮かべていた。
この人なら、きっと母を幸せにしてくれる。
「あ!そうだ、清風さん。せっかくだからお世話になった先生方へ挨拶に行こう。
ち……近々名前も変わるわけだし」
語尾は聞き耳を立てていないと聞こえないほど小さくなっていた。
それでも愛しい人の言葉を聞き逃すはずもない母は、
照れくさそうに頷いて露木さんと一緒に病院へ戻って行った。
「あんなに照れて。しかも二人とも名字で呼び合って……結婚したらどうなるんだか」
見ているこっちが照れてしまう。
私はそんな二人を見守りながら、これから毎日を過ごすんだろうか。
母が元気で、笑顔で過ごせる毎日が来るというのに。
露木さんもとても優しそうな人で、求めていた父の姿だというのに。
このポッカリと空いた埋めようのない穴は……どうしたらいいんだろう。

