爽やかな風が髪を撫でた。
「ウタク!?」
ハッとして顔を上げてみたけど、そこには誰もいなかった。
見渡してみても、辺りに変化はない。
願いが叶ったのに……迎えに来てくれない。
ウタクは「人間界でいろ」と言っているんだ。
「私の気持ちでも試してるの?」
人間界へ送り出される時、一生会えないかもしれないと思ったことは間違いじゃなかったのかも。
そう頭に過るのに、不思議と気持ちは落ち着いている。
だって心は決まっているから。
「もう少しだけ待つから……早く来てよ」
私はそれ以上、ウタクに声をかけることなく、神社を去った。

