神社から目指した先は母が入院している病院。
向かっている最中に公園の時計を見ると、もうすぐ手術の時間だ。
私は慌てて病院まで走った。
「お母さん!!」
母の病室へ着くと、ノックもせずに大きな声を上げて入った。
いきなりだったから、手術の準備で病室にいた看護師さんが体をビクリとさせた。
私もいつもと違う様子に足を止めてしまう。
「実雨ちゃん!よかった、お母さんの手術はこれからよ!」
驚きながらも、私ということに気付いた看護師さんが、母の元へと手招きをしてくれる。
私は母の顔が見やすい位置まで歩み寄った。
「実雨……」
「……お母さん!!」
白いベッドの波に埋もれた母は、ほっそりとした手を私に伸ばした。
私はその手を取って、自分の頬に当てて擦り寄せる。
懐かしい匂いがした。

