景色が猛スピードで流れていく。
「ウタク!私、人間界へ戻るなんて言ってない!」
「口を閉じていろ。舌を噛むぞ」
ウタクは集落の屋根の上を走り、私の視界は大きく上下に揺れた。
その景色はやがて森へと変わりゆく。
皐月さんに人間界へ帰された時に見た光景と重なっていく。
……本当に、人間界へ帰されるんだ。
やがて一本の大きな木の前でウタクは足を止めて私を下ろした。
太古より存在しているであろう逞しい木。
それは見覚えのある木だった。
「……ここから私を人間界へ帰すんでしょ?」
「あぁ、よくわかったな」
「一度、皐月さんに無理矢理帰されてるからね」
そして今は、ウタクに無理矢理帰されようとしている。
でも……今回は違うよね?

