「人間界へ……帰るか?」
音が
何も聞こえなくなる。
ウタクの言葉だけが、
何度も何度も、頭の中に響いた。
「……帰ること……できるの?」
「そろそろ、願いが叶う時だ」
願いが叶う時。
母の手術の時間。
「都合がいいことに、見た目は人間に戻っている。今なら人間界へ戻っても違和感はない」
「そうだね、誰も金狐になったなんて気付かないよ」
「一人から一匹になったが、誰にも知られず一生を終えることも不可能ではない」
「……それってどういう意味?」
一生って?
聞き返す私に、ウタクは笑顔を向けた。
「馬鹿でも理解できると思ったんだがな」
その笑顔が妙に優しくて。
胸が痛くなった。

