ザワザワと迫る暗闇から逃れるように。 私とウタクは格子に顔を寄せて、口づけをかわした。 体が熱い。 キスをしたら皆こんな風に体中がざわめいて熱くなるの? あちこちがドクドク波打つの? 痛んでいた傷さえ……楽になるものなの? 何かおかしい。 事態が悪い方へ進んだのではなく、良い方に転換した意味で。 その証拠に…… 「ふん、天狐(てんこ)になるのも悪くないな」 ウタクが、一瞬にして朱の格子を壊し、私の側に悠然と立っていた。