今だって……大神様の攻撃は続いてる。


ウタクをここまで連れてきた黒い布を私達に向けてきた。


その様子は全てを飲み込む暗黒の闇が迫ってくるよう。



ほら、もう帰る余地なんてないでしょう。



「帰らんのか」


「何よ……まだ我儘言うの?」


「帰らぬなら……」


ウタクが何かを決めたように目を閉じ、細く息を吐いた。

そして静かに目を開け、私をじっと見据える。


「俺が今、一番欲しいものをくれないか?」


「……何?」



ウタクの手に重ねていた私の手を、今度はウタクが私の上に重ねて握ってくる。



「実雨の人生が欲しい」


「……!」



ほら、


こんな時にまで、我儘言わないでってば。



でもそんな我儘なら……



「喜んで」



構わないよ。



握られた手を、私はもっと力強く握り返した。