その本殿の前には数段の木階があり、中には朱色に塗られた大きな祭壇がある。 内部の柱も朱色で、太くどっしりと本殿全体を支えている。 そんな朱で染まる中に……黒く、重々しいオーラを放つ存在がある。 黒い着物に、床を這うように長く伸びた黒髪。 背後にチラつく九尾。 黄金色の耳に、緋色の瞳。 ……ウタクを連れ去った者の姿がそこにはあった。 「大神……様?」 「いかにも、ワイが大神じゃ」 肘掛に体を預けた男が、にんまりと口の端を上げて、犬歯を見せながら笑った。