夜の暗さのせいじゃない。


うっそうと茂った木があたりをより一層暗くしていた。


そこに漂う湿った空気。



普段なら、怖いと思い、身をすくめて進むことをやめるだろう。

でも今日は違う。

進もう、という気持ちがあるわけじゃなくて、無意識に進む身体だけがある。



「ねぇ、近くにいるよね?」


まだ神社は見当たらないけど、声を上げて辺りを見渡す。


すると……


……私の声に呼び寄せられて現れた……というわけでは決してないけど、そう思えるほどのタイミングで神社を見つけた。



木の間から覗く木製の赤い鳥居。


ウタクの神社より小さくて、古い境内。


鳥居を入ってすぐ近くにある石像が、随分と欠けてしまっているけど、ここが、狸が神様の神社であることを教えてくれている。