私はさっき駆け上がったばかりの階段を、今度は勢いよく降りた。
目指す場所は行ったことがない所。
近所で、あの辺りにあるっていうのだけはわかってる。
それだけの情報でも、足は迷わず、まるでその場所へ導かれるように走りだしていた。
日が暮れた細い道を通り抜ける。
「はっ……はっ……」
息は上がっているけど、苦しいと思うよりも、もっと早く走りたい気持ちの方が大きい。
早く……早く。
一分でも、一歩でも早く。
まだあやかしの世界では一日も経ってないけど……でも、ウタクが辛い思いをしているなら……。
「ウタク……待ってて……!!」
ウタクの名前を噛み締めながら、私は曲がりくねった路地の先にある、木立の中へと足を踏み入れた。

