ウタクもそうだ。
私のことを考えて……自分が犠牲になることを選んだ。
私が幸せになることを望んでくれた。
「私の幸せって……?」
綺麗事かもしれないけど、誰かが犠牲になって手に入る幸せなんて嫌だ。
それが私を想ってのことだと、なおさら胸が痛い。
しかも……ウタクが、となると……痛みが増すばかり。
私……ウタクが苦しんでるっていうのに……
これから先ずっと……平常心で夜を越せる自信ないよ。
「お母さん!私……!」
「実雨の思う通りに動いてみなさい。元気な時に、やりたいことやってらっしゃい」
ずっと病院内で生活を続けている母だからこそ、言葉の背中を押す力は絶大。
ありがとう、お母さん。
私は母の手を握りしめてから、病院を飛び出した。

