「体調はいつも通りよ」
母は弱々しく呟いて、上半身を起こした。
「お母さん、無理しないで?」
「大丈夫。寝てばかりじゃ良くないからね」
母がそう言うから、母を寝かしつけようと伸ばした手を引っ込め、そのまま椅子に座ってしばらく話をした。
「実雨、そろそろ帰らないと外が暗くなるわよ?」
「あれ?もう、そんな時間なんだ」
時計を見ると18時を過ぎていた。
母のお見舞いから家へ帰る時、いつも足取りが重いけど、今日もまた一段と重い……。
「洗濯物、持って帰るよ」
「持って帰られたら、お母さんの着替えが無くなっちゃうわ」
「あ……」
私があやかしの世界へ行っている10日間はもちろん、帰って来た時もそのまま母の所へ行ったし、今日も学校が終わってすぐに来てしまった。
たぶん、洗濯は病院にある洗濯機で母か、看護師さんが手伝ってくれていたのかもしれない。

