「ウタク!皐月さん!!」
二人の名前を呼んでみるけど、どちらも現れなければ風さえ吹かない。
ウタクは捕まっているだろうし、皐月さんはすごく固い決意があるみたい。
ウタクの無事より、ウタクが望むことを行った……。
「皐月さんは……それで本当に幸せなの?」
声は小さくて、きっと境内にも届かなかっただろう。
それからしばらくその場へ立ちつくしていたが、状況は何も変わらなかった。
「帰ろう……私は人間界に帰ってきて、お母さんも元気になるだろうし……幸せなんだから」
私は動かない足へ言い聞かせるように呟いて、家へ帰ることにした。
今日が過ぎてしまえば……。
今日が過ぎてしまえばいいんだ。
明日は学校へ行く予定だし、今まで通りの生活にだって戻れるよ。

