頭の片隅には、あの夢がまだ残ってる。
夢なんていつもならすぐに忘れるのに。
入院中の母が元気そうな顔をしていたからかもしれない。
それは今、私が一番望んでいること。
でも私と母以外に、誰かいたような……。
思い返しながらも顔を洗い、髪の毛にクシを通と、いつもよりまとまりがいい。
「あれ? しっとりツヤツヤ……」
鏡に映った自分は、黒髪に艶やかな天使の輪を作っていた。
少し嬉しくなりながら着替えた制服のポケットからは、いつぞやの百円玉が出てきた。
もっと嬉しくなりながら作った朝食は、ご飯がふっくら炊けたし、卵を割れば黄身が二つ入っていた。
今日は……
何かがおかしい。