ウタクは顎から手を離して前を向いてくれたものの、私の腕を握りながら歩き出した。
ウタクの低い体温が私の体温にじわりじわりと侵入してくる。
居心地が悪いと言うか、気恥かしいと言うか……どういう顔していいかわかんない。
「ウタク……私、歩けるから腕、離して?」
「どうだか」
どうやら真っ直ぐあるけるかどうかも疑問に思われてるみたい。
歩けるはずなんだけど。
……ウタクが側にいなければ。
握られた腕は離されることなく、長い廊下を歩きだす。
家来達はもう眠っているのか……辺りは静まり返っていて、耳に響くのは私達二人の微かな足音とそよぐ風の音だけ。

