ウタクは指に付いたソレを艶めいた舌で舐めた。


「人間の涙は塩辛いんだな」

「じゃぁ……善狐の涙は甘いの?」

「……さぁ、どうだろうな」


静寂の中、ウタクの眉を寄せて切なげに笑う顔が、わずかな明かりの元で揺らめいた。



「実雨、詫びのしるしに最高の夜景を見せてやろう」


ウタクは立ち上がると、夜のために御簾の代わりで閉じていた襖を開けた。


「わ、詫び!?ウタクが!?」

「来んのなら来んで構わん。その代わり今日は皐月と一緒の部屋で寝るといい」

「行きます!ウタクについて行きます!」


今さっき騙されたばかりだから、さすがに警戒するけど……でも皐月さんと一緒に寝るよりいい。


……あれ?


ということは今日は私、ウタクと一緒に寝るの!?